リウマチの飲み薬(抗リウマチ薬)

メトトレキサート(MTX)

関節リウマチ治療の第一選択薬

「アンカードラッグ」と言われて、関節リウマチ治療の第一選択薬として用いられます。この薬が現場で使われるようになってから、関節リウマチの診療は大きく変わりました。継続しやすいのと、他の薬剤に起こりやすい「エスケープ現象」が少なく、骨の破壊が進んでいる患者様の破壊抑制効果があるという強みによって、高い評価を得ています(他ページでまとめられている生物製剤やJAK阻害薬を除き、骨破壊の抑制効果が見られたのはMTXしかありません)。
妊娠中の方、授乳中の方、骨髄抑制、慢性肝疾患、腎障害、活動性結核、本剤に過敏症が見られた方、胸水・腹水がある方の場合は、MTXの服用ができません。そのため、事前に採血やレントゲン撮影などのスクリーニング検査を行い、投与しても良いかどうかをチェックしてから治療を始めます。

服用について

1週間に6mg(3錠)から開始し、症状に合わせて最大週に16㎎(8錠)まで増量可能です。服用方法ですが、毎週決めた日に1~2回に分けて服用します。また、副作用を防ぐための葉酸(商品名:フォリアミン®、5mg~20mg程度を週に1回)を、メトトレキサート最終服用した日の2日後に服用する必要があります(例:火曜日にMTXを飲んだ→木曜日)。葉酸が含まれているサプリメントや青汁などを飲まれている場合は、メトトレキサートの効果が弱くなる可能性があるため、いったん止めていただくこともあります。その場合は、葉酸の入っていないサプリメントに変えてください。
MTXを飲み忘れた場合は、翌日または翌々日でしたら飲み直しても問題ありません。その場合、葉酸はそこから2日後に飲んでください。翌週からは、元の服用スケジュールに戻しても問題ありません。また、薬を飲んだ日に吐き気や倦怠感が起こる方もおりますし、「仕事で忙しい日ではなく休日に飲みたい」と考える方もいらっしゃいます。適切な服用スケジュールは患者様によりますので、医師と相談してご納得いただいてから服用しはじめましょう。
早い方ですと2週間程度に、そうでない方でも4~8週間ぐらいで効果が得られます。服用した直後に効く薬ではありませんので、初めは「効いているのかな?」と不安になる方も多くいらっしゃいます。まずは、決められた曜日に飲み続けながら、効果が発揮されるか様子を見てください。効き目が弱かった場合は、副作用の有無をチェックしてから少しずつ増量します。実際に、用量を調整してから関節症状が改善された方もいらっしゃいます。

今まで一度も関節リウマチの治療を受けたことがなかった方にうち、50%以上の患者様はMTXだけで十分に症状が良くなっています。MTXを飲み続けているのに症状のコントロールが上手くいかない場合は、生物学的製剤やJAK阻害薬を追加処方することも検討します。MTXの効き目が良くて関節症状が見られなくなった、かつその状態が半年~1年程度経った場合は、減量を検討します。再燃した場合は、以前の処方量よりも多くなる可能性がありますので、減量・中止は慎重に進めていく必要があります。まずは、ご自身の判断で勝手に服用を止めたり、減らしたりするのは避けてください。やむを得ない理由で飲みにくい場合、続けられない場合は、他の薬に変更した方が良いこともありますので、かかりつけの医師へ相談しましょう。

副作用について

MTXに起こる副作用はたくさんありますし、それをゼロにすることは非常に難しいです。軽めの副作用でしたら対策を行うだけで服用し続けられる可能性があります。ただし重い副作用が出た場合は、速やかに中止しなくてはなりません。MTXの中には、投与量を多くすると副作用の頻度や度合いが増えるもの(用量依存性の副作用)もありますし、量が多かろうと少なかろうと起こり得る種類も存在します。前者のタイプは、口内炎や吐き気などの消化器症状をはじめ、肝酵素の上昇、脱毛、骨髄(造血)障害、日和見感染症などのリスクが高まりますが、飲む量を減らすと改善されやすくなります。また後者のタイプですと、間質性肺炎などを引き起こす恐れがあります。
またリンパ増殖性疾患は、MTXを飲まれた患者様に起こる悪性リンパ腫の一種です。極めて稀な疾患で、MTXの服用を止めると治るケースと、止めても治らないケースに分かれています。後者の場合は、入院しながら抗ガン剤治療を受けていただかないといけません。発熱やリンパ節の腫れ、皮膚潰瘍、難治性の口腔潰瘍などが見られた場合は、リンパ増殖性疾患が考えられます。心当たりのある方はお気軽に当院までご相談ください。

サラゾスルファピリジン(SASP)

「MTXを飲んでみたが副作用や合併症などがあったため、これ以上服用するのが難しい」、という方には、このサラゾスルファピリジンが処方されます。この薬は、第二選択薬として知られています(ヨーロッパのガイドラインでは、レフルノミドを服用する可能性が考慮されていますが、日本では副作用の間質性肺炎が懸念されているため、一般的な選択肢として普及されていません)。 SASPはやや早期で、かつ軽症から中等症の方に有効とされている薬です。250~500mgのSASPを、朝・夕食後の計2回(計500~1000mg)飲んでいきます。海外では3,000mgまで投与されるケースもあります。効果が出るまでの期間は約1~2ヶ月で、MTXより時間がかかりやすい傾向にあります。ただし長期間もの間、安全に飲みやすい薬として活用されています。
主な副作用としては、皮疹や発熱をはじめ、肝機能障害や消化管障害、日光過敏症、血球減少症が挙げられます。サリチル酸が入っているため、気管支喘息を抱えている方、抗生剤アレルギーをお持ちの方に処方するのは難しいとされています。

ブシラミン(BUC)

日本国内で作られた抗リウマチ薬です。海外ではあまり活用されていません。SASPと同じように、軽症から中等症の患者様に効きやすい傾向があり、1日50~100mgから始めていきます。最大300mgまで増やすことが可能です.効果が現れるまで、1~2か月程度かかります。
よく見られる副作用としては、口内炎や皮疹、消化器症状、爪が黄色に変色する、味覚異常が挙げられます。また中には、間質性肺炎や肝機能障害、腎障害などが起こる方もいらっしゃいます。
特に注意すべき副作用は、長期間飲み続けた時に現れやすい腎障害(尿たんぱく、ネフローゼ症候群)です。尿たんぱくが出た時は一刻も早く服用を止める必要があります。止めるとほとんどの確率で腎機能が回復していきますので、ご安心ください。そのためBUCを処方した際は、定期的な尿検査を受けていただくよう案内しています。

タクロリムス(TAC)

これも、日本国内で開発された免疫抑制薬です。筑波山の土壌にいる放線菌から見つかりました。初めは、臓器移植を受けた方の拒絶反応を抑制させるために開発されました。2005年からは関節リウマチへの処方も認められ、それ以降は膠原病であるループス腎炎や筋炎と併発する間質性肺炎などの治療にも活用されています。患者様の健康を守りながら服用し続ける必要があるため、血中の濃度測定まで保険適用されています。血中濃度を調べる場合は、夕食後に飲んでいただき、日中のうちに血液測定します。この血中濃度(トラフ値)が5~10 ng/mlでしたら、副作用が少ない、効果に期待できると評価できます。関節リウマチの場合は、3㎎/1日までと定められていますので、血中濃度を調べながら投与する量を調整します。
主な副作用としては、消化管障害(下痢、吐き気、腹痛)、腎機能障害、耐糖能異常、血圧上昇などが挙げられます。TACを飲んだ時には他の薬剤(シクロスポリンやボセンタン、スピロノラクトン、トリアムテレンなど)を一緒に飲むことは禁じられているため、併用不可になります。

ミゾリビン(MZB)

八丈島の土壌から分離された糸状菌から見つかり、日本国内で開発された免疫抑制薬です。MTXの服用が難しい方でも処方可能です。1日3回に分けて飲む方法と、1回にまとめて飲む方法があります。海外ではあまり使われておらず、MTXよりも効果も低めですが、安全性は高めです。

イグラチモド(IGU)

日本国内で作られた薬です。1日に25mgから飲み始め、4週間飲み続けてから1日50mgに増量します。ワルファリンと一緒に飲むと重篤な出血を引き起こす危険性があるため、服用不可になります。 単独服用でもSASPと同程度の有効性があると評価されています。またMTXの効果が十分でない場合は、これを追加すると効果が高まったと報告されています。主な副作用としては、肝機能障害やリンパ球減少が挙げられます。

レフルノミド(LEF)

メトトレキサート(MTX)とほぼ同程度の抗リウマチ作用があると評価されている薬です。海外では、MTXに次いで使用されている薬として知られています。下痢や皮疹、肝機能障害、高血圧などの副作用が報告されていますが、日本国内では重篤な間質性肺炎もみられたと指摘されています。慎重に処方する必要があります。

関節リウマチに対する薬の多くには免疫抑制効果が入っているため、先述した飲み薬を使っている患者様のほとんどは、「生ワクチン」が摂取できません。例えば、小さな子どもが受ける水ぼうそうやBCG、麻疹、風疹、おたふく風邪、ロタウイルスといったワクチンは「生ワクチン」に当てはまります。また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンは不活化ワクチンですので、接種しても大丈夫です。接種したいワクチンがありましたら、事前に医師へご相談ください。