リウマチが良くならない方へ

現在リウマチを治療中の方の相談事例

  • 血液検査の数値は改善されたけど、まだ手指が腫れる。
  • 1か月前から治療を続けてみたけどまだ痛みが消えない。
  • ここ数年、リマチルとアザルフィジンを使い続けているのですが、腫れや痛みが続きます。
  • 生物学的製剤でいったんよくなったけど、最近また痛むようになった。
  • 現在、大病院で治療を受けています。クリニックで診てもらうことは可能でしょうか?


このように、現在リウマチの治療に励んでいる患者様から多くの質問をいただいています。リウマチは風邪などと違い、一生向き合わなければならない疾患です。また、あまりなじみのない薬を使っているため、色々な疑問点・不安なことが出てくるのも無理はありません。このページでは、よく患者様からいただく質問の回答をまとめています。ぜひ参考にしてみてください。

相談事の一覧

CASE01

【ご相談内容】
おととしにリウマチと診断されてから治療を続けています。初めと比べると痛みは消えましたが、まだ手首や指が腫れて痛みます。血液検査の数値が良くなったから心配しないでと言われましたが、不安になりました。

こういった質問は多くの患者様からいただいています。血液検査に問題がなくても腫れや痛みが残っている場合は、ほとんどの確率で関節内にリウマチが残っています。 確かに、リウマチで関節に炎症が起こると、血液検査の炎症(CRP)や、軟骨破壊の指標(MMP3)が基準値より高く出ます。 そして、治療によってリウマチが緩和されると、CRPやMMP3も正常値に戻ります。 しかし、CRPやMMP3が正常値に戻っているのにもかかわらず、リウマチが落ち着いていないケースは珍しくありません。
また手指や足指の関節は小さいため、その中でリウマチの炎症が起きていても、CRPやMMP3の増加が少なくなります。その結果、血液検査では正常値という結果が出てしまいます。実際に、患者様が気になっている手指や足指に関節エコー検査を行うと、リウマチの炎症が残っていることが確認できたケースは多々あります。血液検査のみでチェックすると、リウマチを逃してしまうので、ぜひ関節エコー検査も一緒に受けましょう。
また中には、リウマチがきちんと寛解されているのにもかかわらず、加齢による軟骨の減少・骨の出っ張り(骨棘:こつきょく)によって痛み・腫れが出ている可能性も考えられます。この状態は「変形性関節症」によるものです。変形性関節症は、膝の軟骨が減ることでよく知られている疾患ですが、手指でも同じことが起きることはあります。 その場合、リウマチの治療を続けても改善されませんので、まずは関節エコー検査で痛みや腫れの原因を見つけていきましょう。

CASE02

【ご相談内容】
1か月前に診断がついたため、メトトレキサートを4週間処方されました。薬を飲み続けていますが、症状が改善されません。 初めは手指だけに症状が出ていましたが、膝や肩も痛くなってしまい寝不足気味です……

手首や指、膝に大きな腫れがみられますし、関節エコー検査でも、関節内の炎症がひどいことが確認できます。リウマチの活動性が強い状態ですので、メトトレキサートを多く投与しても改善しにくい可能性が高いです。しかし、数カ月間やみくもにメトトレキサートを多くしても、骨が破壊されるリスクもあります。この場合は、生物学的製剤などの治療を検討した方が良いかもしれません。
しかし、ご相談者様を関節エコー検査で確認したところ、手指や肩、膝関節には、かなりひどい炎症が起こっており、骨びらん(小さな骨の破壊)ももう始まっています。 かなり症状が強くて進行も早い状態ですので、メトトレキサートだけですと数カ月間も、痛みに耐えないといけなくなります。また、時間をかけてメトトレキサートが週12㎎前後の量になるまで増やしていっても、リウマチが抑えられないかもしれません。 重度でかつ進行スピードが早いリウマチの場合は、初期の段階から生物学的製剤をつかいましょう。また、プレドニンなどのステロイド剤を短期間だけ用いるのも良いでしょう。

リウマチは、関節の中に炎症が起こる疾患です。炎症を火事で例えてみましょう。小さなボヤでしたら少なめの水で消火できますが、大きな火事ですと消防車を呼ばないと消化することができません。リウマチも火事と同じように、症状の強さに合わせた薬が必要になるのです。 まずは関節エコー検査で炎症度合いをチェックし、生物学的製剤とメトトレキサート、そしてプレドニンなどの薬を複数組み合わせることで、一気に寛解を目指していきます。

※弱いリウマチ:少なめの水(飲み薬)で何とか消えるボヤ
※強いリウマチ:ビルなどのような、大きな施設での火災

飲み薬ももちろん大事ですが、早いうちに生物学的製剤も追加して、一気に鎮める必要があります。ここで重要なのは、飲み薬を使いながら時間をかけて治療した方がいいリウマチなのか、それとも早いうちに生物学的製剤なども使った方がいいリウマチなのか、きちんと見極めることです。ここで、関節エコー検査の出番です。 率直に申し上げますと生物学的製剤は効き目が強い分、お値段も高くなります。また、患者様ご自身で注射を打っていただく必要があるため、医師としては軽い気持ちで勧めることができません。

関節エコー検査がなかった頃は、まずメトトレキサートで3~4カ月様子を見て、それでも改善されなかった時に生物学的製剤を案内して……という流れで行われてきました。 当時の患者様には、大変ご不便をおかけしたのではないかと思っております。 関節エコー検査を活用できるようになってからは、腫れている関節に超音波を当てるだけで、関節の中を観察できるようになりました。そのおかげでリウマチの重症度をきちんと把握できるようになったため、必要な方のみに生物学的製剤の説明を行い、処方することができるようになりました。
「薬を飲み続けているけど、痛みがひかない」、「前より腫れている関節が増えた」「痛みで眠れない」などのお悩みがありましたら、ぜひ当院へご相談ください。 まずは関節エコーでリウマチの重症度をチェックし、必要に応じて生物学的製剤なども処方していきます。このように、初期からきちんと重症度に合った薬を使っていくのがポイントになります。

CASE03

【ご相談内容】
診断されてから数年間リマチルを飲み続けているのですが、腫れたり痛くなったりする日があります。少しずつ指も変形しはじめ、肘もスムーズに伸ばせなくなりました。 アザルフィジンも飲むことになりましたが、一向に良くなりません。このまま治療を受ければ良いのか、不安になりました……

このご相談者様の関節エコーの結果を見ると、指や手首、肘に強い炎症があり、かつリウマチが残っているのも分かります。さらに、骨の破壊も起こっています。 リマチルやアザルフィジンでは、リウマチが抑えられないので、ぜひ飲み薬を変えてみましょう。
「リウマチが一時的に良くなったけど、完全に症状が消えていない」と訴えて受診される患者様の多くは、リマチルやアザルフィジンといった、昔から使われてきた薬を今でも飲み続けている方です。また、「メトトレキサートを週に3~4錠(6~8㎎)」という、少量処方されている方にも見られます。

昔は、この2種類の薬しかなかったため、多くの患者様がこれらを使ってきました。軽度の方でしたら、これらの薬でも良くなる可能性はありますし、その場合は処方内容を変えなくても大丈夫です。ただし、これらの薬ではリウマチが寛解できず、手指が曲がったり肘がスムーズに曲げ伸ばしできなくなったりする方も珍しくありません。
現在ではリウマチと診断された際、リマチルやアザルフィジンではなくメトトレキサートが処方されます。リマチルやアザルフィジンの服用からスタートするケースはあまり見かけなくなっています。現在、リマチルやアザルフィジンのみの治療を受けられており、なかなか改善されない場合は、メトトレキサートや生物学的製剤などに変更した方が良いのかもしれません。変更した結果、良くなることもあります。
また、「メトトレキサートを飲んでいるのにリウマチが良くならない」と悩む方の場合、メトトレキサートそのものも処方量が少なすぎるのかもしれません。 実は、メトトレキサートが販売されたばかりの頃は、週3~4錠(6~8㎎)の少量から用いられてきました。その後に、「この量では効果が発揮されない、さらに増やしても安全性に問題はない」と分かってから、現在の日本では週8錠(16㎎)までと定められるようになりました。メトトレキサートの効果を十分に発揮させるには、週5~6錠(10~12㎎)使う必要があります。どれだけ質の高い薬でも、量が少ないと効き目も下がってしまいます。 処方された量が少なくてリウマチが抑えられていない場合は、まずメトトレキサートを増やして様子を伺います。

CASE04

【ご相談内容】
現在、レミケードという生物学的製剤を使っています。初めはすごく調子が良くなりましたが、半年前からまた手首や膝が腫れてしまいました。血液検査の炎症値(CRP)も上がったので、薬が効かなくなったのか心配です。

残念なことに、レミケードを吸い取ってしまう「薬物抗体」が体内にできた可能性が高いです。それにより、薬の効果も消えてしまったのではないかと考えられます。まずは、別の生物学的製剤に変更しましょう。生物学的製剤は、リウマチにかなり有効とされている薬で、効き目が強いと言う特徴をしています。初めは病院内で点滴するタイプのレミケードしかありませんでしたが、現在ではエンブレル、オレンシアなど、ご自身で注射できるお薬がたくさん登場しています。 生物学的製剤の仕組みですが、まずリウマチの原因物質(TNF、IL6)や原因となる細胞(T細胞)のみを狙って、薬の効果が発揮できるように作られた大きなタンパク質の薬です。バイオテクノロジーを活用することで、生成されています。 リウマチの仕組みを調べたうえで、これが原因ではないかと考えられる部分に効くように作られているため、比較的効果が得られやすいです。

しかし、生物学的製剤にもデメリットはあります。 まず、ご自身で注射を打たなくてはいけない点です。薬自体が大きなタンパク質ですので、飲み薬にすると胃や腸で分解されてしまいます。分解されると栄養に変化するため、薬としての効果が発揮されません。それゆえに、注射を使わざるを得ないのです。
2つ目のデメリットは、体内に薬物抗体が作られるケースもあることです。薬が大きなタンパク質であるため、使い続けていくうちに身体が「異物」とみなしてしまいます。その結果、薬を吸着する薬物抗体ができるのです。 大きなタンパク質なので悪目立ちし、免疫細胞から「身体の中に見慣れないものがいる」と思われ、排除されてしまいます。一度でも薬を吸着する薬物抗体が作られると、その後いくら生物学的製剤を使い続けてもすぐに免疫細胞に見つかるため、体内ですぐに吸着されてしまいます。 この状態になりましたら、他の生物学的製剤に変える必要があります。 相談をいただいた患者様が使っていたレミケードは、もう薬に対する抗体が作られてしまったため、今まで通りレミケードを使っても効果は得られません。
(※一度でも薬物抗体が作られると、すぐに発見されて体外へ追い出されます)

薬に対する抗体が作られていなければ、生物学的製剤が効かない可能性も低くなります。 しかし、どうしたら薬物抗体が作られないようにしながら、生物学的製剤を使い続けていけばいいのでしょうか。まず重要なのは、初めから薬に対する抗体が作られにくい生物学的製剤を選ぶことです。 レミケードやヒュミラは抗体が作られやすいのですが、エンブレルやオレンシアなどの生物学製剤は、抗体が作られにくいのです。そのため、長期間投与も可能になります。 また、メトトレキサートなどの飲み薬も併用すれば、生物学的製剤の吸着が起こりにくくなります。レミケードやヒュミラなどを投与している方は、メトトレキサートも併用して抗体が作られるのを予防しましょう。

CASE05

【ご相談内容】
去年から手指が痛くなり、近所のクリニックから大病院へ紹介されました。リウマチと診断されたため、エンブレルという生物学製剤を使って治療を続けています。
このままクリニックでも診ていただくことは可能でしょうか?

当院では、生物学的製剤の自己注射をしている患者様の治療を、積極的に行っています。エンブレルやオレンシア、シムジア、ヒュミラ、アクテムラ、シンポニーなど、自己注射する生物学的製剤でしたら、全ての薬に対応しています。 現在、約200名の患者様が生物学的製剤で治療を受けられています。 ただし、点滴での生物学的製剤投与には対応していませんので、予めご了承ください。

一昔前まで、リウマチの診断には必ずMRI検査を用いて、点滴の生物学的製剤しかなかったため、治療体制が今よりも不十分でした。大病院でMRIなどを受けてからリウマチと診断され、化学療法室などで生物学的製剤の点滴が行われてきました。
しかし、現在はMRI検査ではなく、関節エコー検査でリウマチの診断ができるようになりました。エコーが行き届かない首や股関節、腰などの部位は、現在でもMRI検査が必須になりますが、リウマチの症状が起こりやすい部位(手や指、肘、肩、膝、足首、足指など)は、関節エコー検査でないとすぐには調べられません。 また、右手だけ検査を受ける場合、MRI検査ですと身体の一部しか検査が受けることができず、造影剤の投与や、大病院の予約を取らなければならず、患者様に負担がかかってしまいます。しかし、関節エコー検査の場合はクリニックの診察室でも簡単に受けていただくことが可能なため、患者様の負担を軽減することができるようになりました。 さらに、生物学的製剤の治療も、一昔前までは大病院で入院生活しながら、血圧や体温を測りながら点滴を行っていましたが、現在では、ご自宅内で月に数回だけ、自己注射で完結できるようになりました。
先述したレミケードという点滴薬ですが、昔は2時間前後も点滴を打ち続けないとならない薬でした。また血液中に薬が入るため、アナフィラキシーショック(呼吸苦、血圧低下などが起こる重篤なアレルギー症状)が起こるという問題点もありました。 しかし、現在出ている生物学的製剤の多くは、点滴ではなく皮下注射です。ご自宅内でタイミングの合ったときに注射が打てるようになりました。仮にアレルギー反応があったとしても、注射した部位が若干赤くなる程度で済みます。安全性も向上し、時間をかけずに治療を受けられるようになりました。
もちろん薬が効きにくい難治性リウマチの患者様や、肺炎などの感染症があって入院期間が長い方などの場合は、病院でのリウマチ治療が必要になります。 とはいえ、レミケードの点滴を受けるために入院していた昔とは違い、現代のリウマチの患者様はクリニック外来での治療で済ませられるようになりました。このように医療技術が進んだことで、リウマチに特化した専門クリニックでの治療が行えるようになりました。受診に関して分からないことがありましたら、ぜひ当院までお問い合わせください。